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「家事も子育ても完璧に」という プレッシャーを手放そう【きかせて、子そだて】

子育て世代の働き方などを発信するジャーナリストの中野円佳さんは、日本で子ども2人を育てながらの共働きを経験した後、夫の転勤に伴ってシンガポールへ。日本の子育て層が感じる困難さの理由や、そこから抜け出す方法について聞きました。

シンガポール帯同で 初めての専業主婦生活

3年前、夫のシンガポール転勤が決まりました。共働きで子ども2人を別々の保育園へ電動自転車で送り迎えする毎日に疲弊し、生活を変えたいと思っていたこともあり、仕事は辞めたり休んだりして、帯同することを決めました。ところが、引越し後初日から夫は仕事にかかりきり。家具選びや幼稚園探しなど、生活のセットアップはすべて私にかかってきました。私がいなかったらどうなるのかと思うと、「転勤」という制度が、誰かの支えを前提としているのだな、と改めて感じましたね。  シンガポールでは初めての専業主婦生活を経験。当時子どもたちは5歳と1歳、幼稚園に入れても当分は慣らし保育で、自分の時間は少しだけ。帰ってくると、2人と一緒に遊びつつの夕食準備で、もうカオス。世の中の専業主婦のハードさがわかりました。  また、「経済的に自立していない」ことも苦しかったですね。夫に生活費をもらっている状態では、喫茶店でカフェラテを頼むのもためらわれ、夫との家事や育児の分担も強く言い出せず、飲み込むようになったことも思わぬ経験でした。

「パパも在宅勤務できたんだ」 コロナ禍で変化した共働き

私が『「育休世代」のジレンマ』を書いた2014年には、子どもを持って働く女性は、「時短や定時で帰る人は第一線とは認めない」といった価値観に阻まれ、心が折れて退職したり、仕事を続けながらも疲弊し、困難を感じている状況が多くありました。しかし、ここ数年でフルタイムで働く女性は珍しくなくなり、主にインターネットを通して女性の声が多く上がったこともあり、状況は変わってきています。  さらに今年は新型コロナウイルスの流行で、在宅勤務を取り入れる企業も多くありました。今までは子育て中のママだけが在宅勤務をしていたところ、「あれ?実はパパも在宅勤務ができたんだね」となって、企業や働く人の意識も変わりつつあります。

SNSの「一番すごい人」と 自分を比べてしまう時代

共働きも専業主婦も、日本の女性が大変な理由のひとつは、ハイクオリティな家事を求めすぎているから。手づくりの品数の多い料理やお弁当を用意し、見た目もおしゃれで、掃除機掛けも毎日…。それはすごいことなのだけど、本当にそこまで無理して求めることなのでしょうか。たとえば「一汁三菜」は、もともとお茶の席のおもてなしであり、家庭料理として一般的だった時代はありません。今はSNSの普及もあって、「家事はこの人が目標」「子育てはあの人のように」と、いろんな分野で「一番すごい人」と自分を比べてしまいがち。家事も子育ても完璧に、というプレッシャーは手放して、ハードルを下げていきましょう。自分自身の幸せにもつながるし、子どもたちに「人と違ってもいい」「スタンダードに縛られなくていい」というメッセージを伝えることにもなりますよ。

 

海外×キャリア×ママサロン

海外子育てや海外で働くことに関心がある主に女性向けの有料オンラインサロンを運営中。いつか海外で子育て/仕事してみたい、子どもをバイリンガルに育てたい、現在海外駐在・駐在帯同・留学中、数か月~数年後に自分・夫の海外転勤があるかも、海外経験あり、帰国後も海外経験者とつながっていたい…という方、海外旅行も出張もいけない中で他国の様子を知りたい、海外子育てのリアルを覗いてみたいという方などFacebookページにアクセスしてみてください。週2回の動画配信と投稿、月1回のオンライン会のほか、その都度参加者同士での質問や情報交換が可能です。

中野 円佳さん
ジャーナリスト。東京大学大学院教育学研究科博士課程(教育社会学)在籍。日本経済新聞社勤務時、育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に提出した修士論文を『「育休世代」のジレンマ』(光文社新書)として出版。その後新聞社を退社。著書に『なぜ共働きも専業もしんどいのか』(PHP新書)など。2児の母。シンガポール在住。
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