筑波大学教授の徳田克己先生が、ママの子育てに関する悩みに答えてくれるコーナー。今回のママの悩みは、「子育て情報の見極め方」についてです。
極端な情報を信じないようにしましょう
ママからの質問
「今、〇〇を始めないと子どもは××になる」などと聞いては焦ったり、それとはまったく逆の話を聞いて戸惑ったり、何を信じたらいいのか…。あふれる子育て情報に振り回されるばかりで、自信を持てません。
徳田先生より
膨大な子育て情報の中には、間違った情報や説明不足で誤解を与える情報もあれば、正反対のことを勧めるものもあり、お母さんは右往左往してしまいます。しかし、お母さんが迷いながら子育てをすると、子どもは混乱して心理的に不安定になります。今回は、子育て情報の見極め方を解説しましょう。
「弱毒性」と「強毒性」の子育て情報
間違った情報や説明不足の情報の中には“弱毒性”のものもあれば、私たち専門家から見て明らかに子どもに悪い影響を及ぼす“強毒性”もあります。
「マンションの高層階に住むと子どもの発達がゆがむ」などのフレーズは、たとえ噂を信じてマンションから引っ越してしまったとしても(実際その例はありました)、子どもにはそれほど害はありませんから“弱毒性”です。
しかし、早期の教育が大切だからと、幼児のうちから過剰なドリル学習等に取り組ませることは、子どもの発達に悪い影響を与える可能性があります。つまり“強毒性”があると言えます。本来、幼児にドリル学習等をさせるのであれば、子どもの発達の状況に合わせて、工夫しながら行う必要があるのです。
ブームにのった子育て情報
さまざまなブームも子育て情報に影響を及ぼします。たとえば、脳科学との関連を謳う子育て情報もその一つです。確かに脳科学は日々進歩が著しいのですが、脳についてわかっていることは未だわずかであり、脳の仕組みから子育てを語ることには無理があります。研究者でない人たちが自分の主張を正当化するために、あるいは何となくあてはまり話題になりそうだからと、脳科学のデータを使っていることもあります。
「テレビやビデオを見ると発達がゆがむ」「ゲームをすると脳がおかしくなる」「親の愛情が不足していると子どもが爪かみや指しゃぶりをする」「一人っ子はわがままになる」「三歳までに習い事を始めないと遅い」……よく見かけるフレーズですね。
しかし、それらは本当ではなかったり、誇張であったりします。日本人は健康・病気やダイエット、子育てに関する情報を信じやすい傾向があるのですが、「〇〇しないと、××になってしまう」といった極端なことは信じないようにしましょう。極端な子育てをして、子どもに良い影響があった例はないのです。
それでは何を信じればいいのか?
育児の基本は昔から言われているように、子どもを圧迫しないことです。習い事も、せいぜい週に3回までがいいでしょう。子どもは遊びの中から、社会性や考える力を身につけていきます。
はやりの習い事や脳に良いとされる食べ物、目新しい教材などによって、生きる力が身につくわけではないのです。お父さんとお母さんが一緒にわが家の子育ての方針をよく話し合い、ゆったりとした気持ちで、お子さんと向き合ってもらいたいと思います。