育児に家事、仕事にと忙しいママたち。「食」の大切さはわかってはいるけれど、いつも手づくりをして、栄養バランスや食材にもこだわって――と、毎食をパーフェクトにととのえるのは大変です。そんな中でも、家庭の食卓で本当に大切にしたいこと、「食」について子どもに伝えていきたいこととは何でしょうか?
今回お話を伺っているのは、2008年から約10年間にわたり、クルール本誌の特集で企画・レシピ・調理を担当している金原恵美さん。子どもたちに食の大切さ、楽しさを伝えるキッズ料理研究家としても活躍しています。
後編では、今から子どもに育んであげたい「食」の力とは何か、金原さんにお聞きしました。
*前編はこちら
金原恵美さん
株式会社Cooking&Glow代表。食育指導士、キッズ料理研究家。2008年より「クルール」本誌特集の企画・レシピ・調理を担当。企業主催のイベント等でケータリング、料理教室講師をつとめる。2016年宇都宮市内に「Cooking&Glow」をオープン。「食を通して輝く未来を」をコンセプトに、小学生を対象とした料理教室の開催、働く女性をサポートする体にやさしいお惣菜・ランチボックスの販売等を手がける。24歳、20歳の娘、16歳の息子のママ。
Cooking&Glow:http://cookingglow.com/
子どもの「食」について、金原さんが大切にしていることは何ですか?
一番は、楽しいことです。
毎日のごはんが楽しければ、毎日ワクワクして、生きることが楽しくなるでしょう? 楽しいごはんには、体を生かすだけでなく、心も生かす力があるんです。
もちろん、手料理や体に良いことも大切だけど、ママが「こうあるべき」に縛られてキリキリしていたら、ママも子どもも、ちっともハッピーじゃない。それより、今できる中で「子どもを笑顔にしよう」と考えながらキッチンに立つ方が、ママも、子どもも楽しいですから。
子どもの好き嫌いやジャンクフードばかり食べたがるなど、心配なこともあります
確かに心配になる気持ちもわかりますが、それも発想次第で、少しずつ変えていけるんじゃないかなと思うんです。
たとえばファストフードを食べたがる子どもに、頭ごなしに「ダメ!」では子どももシュンとしちゃうけど、「じゃあ今度、お家でハンバーガーつくってみようか。中に何がはさまっているか、よく見ておいてね」と言ったら、子どもはきっと「わあ!」と目を輝かせるはず。ママと一緒にハンバーグを焼いて、パンにはさんで食べるなんてワクワクするし、「自分でつくるとおいしい!」と気づくかもしれません。
忙しいとか子どもの好き嫌いとか、いろいろある中でも「どうしたら楽しめるかな?」と発想して楽しんじゃいましょう。親子が毎日笑顔で食卓を囲むことで、子どもの心も体も、健やかに育まれていくと思いますよ。
子どもの食について、家庭ではどんなことを心がけたらいいでしょうか?
子どもが将来、自分に必要な「食」を、自分で選びとれるようにしてあげてほしいなと思います。
たとえば、塾の前にコンビニに行って、千円札一枚で何を買うか。アンパンとコーラ、お菓子ではなく、おにぎりと汁物、サラダ、おかず――とバランスよく選べるようになってほしいですよね。
それには、子どもが小さいうちから一緒にお買い物に行って、会話の中で「食の選び方」を教えてあげるのが一番です。
野菜を買うときは「この白菜、みずみずしくておいしそうだね」と野菜の選び方を教えられるし、コンビニでサンドイッチを買うときも「いろんな味があるほうが楽しいから、ミックスサンドにしよう」と、いろいろな食材を偏りなく食べる大切さを教えることができますよ。
食の知識に自信がないママはどうすればいいでしょう?
詳しい知識がなくても、お肉ばかりでなく野菜も食べたほうがいいなとか、野菜も赤、緑、黄色…といろんな色の食材を食べるとバランスがいいとか、何となく感覚でわかっていることってありますよね。それで十分です。
子どもって「なんでなんで?」と聞きたがるから、返答に困ることもあるかもしれないけれど、そんなときは「だって、いろんな色が入っているほうがワクワクするじゃない?」「これを食べると元気モリモリになるからよ」とか、トンチで返してあげましょう。そのほうが食べることが楽しくなるし、子どもにも伝わると思います。
知識だけでなく、命をいただくことのありがたさや、つくってくれた人への感謝の気持ちを育んであげることも大切です。といっても難しいことではなく、たとえば、買ってきたお惣菜でもちゃんとお皿に盛りつけて、「いただきます」と手を合わせてからいただくようにするとか、日々、食卓を囲む中で伝えていけると思いますよ。
食べることは生きること。暮らしの中で、子どもに食の尊さ、楽しさを伝えてあげてほしいなと思います。
読者にメッセージをお願いします
子育ては思い悩むことも多いけれど、そんな時こそ、今、目の前にいる子どもを笑顔にしてあげましょう。子どもの幸せな未来をつくるのは、毎日の笑顔、日々の小さな「うれしい」「楽しい」の積み重ねだと思いますよ。