幅5cmのラインの上で、歩いたり跳ねたりポーズを取ったりなどの技を行うスポーツ「スラックライン」。最近はテレビなどで目にする機会も増えてきました。2009年の日本上陸後間もない頃からスラックラインを始め、プロライダーとして活躍してきた岡田亜佑美さんにお話を聞きました。
偶然参加した体験会が出会い たった3人で公園で練習
スラックラインとの出会いは、小学4年生のときでした。近くの道の駅で体験会があったのですが、それが目的で行ったわけではなく、通りすがりに見つけて、参加はまったくの偶然。しかも、自分から「やりたい」と言ったわけではなく、「やってみなよ」と同行の伯母に勧められて、半ば嫌々参加したんです。体験の感想は、「難しそうだったけど、思ったよりもできたな」。その体験会で講師をしていたのが、私の1歳年上の女の子のお母さんで、「上手だから、一緒にやらない?」と声をかけられました。
それまでスポーツ経験は一切なく、「バスケがやってみたいかも」と見学は行ったけど、「そこまでじゃないかな」と結局入会には至らず。でも、スラックラインに誘われて、「楽しそうだからやってみたい、連れていって」と初めて自分から母に頼んだんです。
当時は、スラックラインが日本に入ってきて、まだ2年ほど。今でこそ全国にスクールや体験会が広がったり、テレビで取り上げられる機会も増えてきていますが、その頃は競技人口も少なく、スラックラインを知っている人はわずか。スクールもなく、講師とその娘さん、私の3人で、公園にラインを張って練習していましたね。
男子の見たことのない技に 「自分もやりたい!」
スラックラインを始めて半年後、初めての大きな大会に出ました。当時はまだ、ジュニアクラスの女子は私たち2人だけ。でも、男子にはもっと上手な子たちがいて、飛んだり回ったり、見たこともないような技を決めていたんです。「こんなすごいことができるんだ、自分たちもできるようになりたい!」そこから心に火がつきました。土日は朝から晩まで1日中練習、中学生になっても部活には入らず、スラックライン一筋。
中学1年生でプロライダーのオファーをもらったときは、ずっとプロを目標にしていたので、うれしかったですね。高校生になると、「スラックラインを教えてみては」と声をかけてもらい、自分のスクールを開くことになりました。
結婚、出産を経た今は、練習場所の確保が課題ですが、また大会に出たいと思っています。
興味を持ったことは とにかくやってみよう
もともとは引っ込み思案な性格で、新しいことに自分からチャレンジするタイプではなかったんです。人見知りで、いつも母の後ろにくっついているような。
でも、スラックラインを始めてから変わりましたね。イベントでは、全国各地やドイツやアメリカなど海外へ行くこともあり、そんなとき親は「行っておいで」と一人で行かせてくれました。高校生とはいえ、親も心配だったはずですが、送り出してくれたことに感謝しています。おかげで、いろんな年代の人と関わってコミュニケーションを取る経験を積み、積極性が育まれたと思います。
息子は今2歳。本人がやりたいなら、ぜひスラックラインを教えたいと思います。今のところ、簡易的なラックにはすごく乗りたがるので興味はあるようです(笑)。
スラックラインは、1歳でも、歩ければ始められるスポーツ。「体幹が鍛えられる」と、サッカーやスキージャンプなどの練習にも取り入れられているそうですし、大人からでも、運動神経には関係なく楽しめますよ。
特に子どもたちには、「興味を持ったことは、とにかくやってみる」ことを勧めたいですね。私も体験会に偶然出会って、スラックラインの道に進みました。ぜひ好きなものを見つけてくださいね。