育児と保育、それぞれの役割は何でしょうか。
また、親にしかできないこと、親だからできることとは?
“まあせんせい”の愛称で親しまれ、
保育園の園長として保育の現場に取り組むほか、
手遊びや歌遊びの創作も行うなど幅広く活躍する保育士、
菊地政隆さんにお話を伺いました。
菊地 政隆 さん
“まあせんせい”の愛称で親しまれる男性保育士。新たな保育への取り組みが注目され、TBS「情熱大陸」など多数のメディアに出演。現在は静岡第一テレビ「げんきっず!!」で歌のお兄さんとしてレギュラー出演。保育・育児雑誌、書籍など執筆活動の他、保育教材の製作も行い、平成18年にはCD+DVD「まあせんせいとあそぼう!!」が厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に認定される。
保育と育児のちがいは何でしょうか?
保育と育児は似ているようですが、まったく異なるものなんですよ。大きなちがいは、育児が「個」としてのわが子と向き合うのに対し、保育では「集団」としての子どもたちをみていくことです。
また、育児に専門スキルは必要ありませんが、保育士は国家資格者として高い専門スキルが求められます。たとえば、保育士は子どもたちと何気なく遊んでいるようですが、実は遊びには、心にはたらきかけるもの、体の発達を促すもの、しつけなど一つひとつに意味があります。
保育士や幼稚園の先生は綿密に計算されたカリキュラムのもと、遊びや運動、言葉がけを通して、子どもたちの成長を巧みに促しているのです。…と言うと、私たちプロは育児も上手にできそうですが、そうではありません。
親だからできること、先生だからできることはちがうのです。だからこそ役割分担です。ママたちには、プロに任せられるところはどんどん任せて、その分、子育てを楽しんでほしい。その方がきっと、ママも、子どもたちもハッピーになれると思いますよ。
幼稚園・保育園ならではの育ち、親だからできることとは?
幼稚園や保育園は、子どもにとって社会生活の第一歩です。お友達とのかかわりを通して、家庭ではできない様々なことを体験していきます。一人ではできないことも、お友達が一緒だとどんどんできるようになるし、子ども同士で大きく育ちあい、集団の中で飛躍的に伸びていきますよ。
一方、親だからできること、親にしかできないことは、わが子を見守り、受けとめてあげることです。普段から子どもをよく見て、かかわってあげてください。
大切なのは言葉がけ。たくさん褒めて、ちゃんと叱ってあげましょう。子どもは親に褒められることで、自分を見てくれているんだと安心できます。また、人の迷惑になることや善悪の基準を子どもに教えるのも、親の大事な役割です。叱るときは感情的にならずに、何がいけないのかを具体的に教えてあげましょう。
そしてもう一つ心がけてほしいのは、毎日「今日はどうだった?」と子どもに聞いてあげることです。親は子どもの変化に気付けるし、子どもの方からも話しやすくなります。
これから新しい世界へと飛び立っていく子どもにとって、自分のことを気にかけ、話に耳を傾けてくれる存在は心の大きな拠り所となります。自分を受けとめてくれる存在がいるとわかれば、安心して、社会へ力強く踏み出していくことができますよ。
ママたちにエールをお願いします
子どもたちを見て思うのは、子どもが持つ力は強い!ということです。だから、親は子どもの力をもっと信じて、子どもの自然な育ちに任せていけばいい。大丈夫、どんな子育てをしても、ちゃんと育ちますよ。限られた子どもとの時間、悩んでばかりはもったいない。人に頼れるところは頼りながら、子育てを楽しんでいきましょう。
※この記事は2016年10月号クルールに掲載した記事に加筆修正したものです。