「牛乳は体に悪い」と聞きました
子どもが牛乳を飲むと 「牛乳貧血」になる!?
「子どもに牛乳を飲ませるのは健康に悪いとインスタグラムで見たのですが、本当ですか?」と保護者から尋ねられました。
実際にインスタグラムで「牛乳」を検索してみると、牛乳を飲みすぎて鉄分が不足する「牛乳貧血」についての投稿がたくさんありました。
確かに、鉄は、赤血球が全身に酸素を届けることにも、子どもの発育や発達にも欠かせません。一方で母乳に含まれる鉄は少ないので、母乳のみで育てていて生後5~6カ月からの離乳食も進まないと鉄が不足することがあります。
また、牛乳を大量に飲みすぎて他の飲み物・食べ物を摂れなくなった結果、鉄分不足になり、貧血に陥ることもあります。しかし、医学雑誌で報告された「牛乳貧血」の例では、1歳前後の子が毎日800~1500mlの牛乳を飲んでいました。これは大人の体重に換算すると、毎日4~10・5Lの牛乳を飲んでいるようなもの。そこまで飲むことはまずないでしょう。鉄分不足による貧血が起きやすい「生後9カ月~2歳」や第二次性徴期には気をつけたいところですが、むやみに牛乳ばかり飲ませなければ問題ありません。
骨がもろくなる、発がん性… 危険を煽るデマを一つずつ検証
インスタグラムには、「牛乳貧血」以外も、牛乳の危険性を煽る投稿が多く見られました。たとえば、次のようなものがあります。
●牛乳を飲むと、骨がもろくなる・骨粗鬆症になりやすくなる
「牛乳を飲むことで、骨がもろくなった・骨粗鬆症になる」ということはありません。逆に、「牛乳の摂取を増やすと、成長期では骨量が増加し、中高年期では骨量の減少が抑制された」という研究結果は多く存在します。
●乳牛は成長ホルモンが与えられており、牛乳を飲むと病気になる
乳牛に使用される成長ホルモンは、アメリカなど20カ国で使用されていますが、日本では承認されていないので、国内ではそもそも使われていません。
●牛乳に含まれる「カゼイン」は発がん性物質で消化も悪い
牛乳に含まれているタンパク質「カゼイン」はがんを引き起こしやすい物質ではありません。また、カゼインはとても消化の良いタンパク質です。
白砂糖、小麦粉、白米も安全 脱「フードファディズム」を
牛乳のように、ある食べ物が健康に良い・悪いなどと過大評価することを「フードファディズム」といいます。
「健康に良い」と話題になったものにはリンゴや納豆などがありますが、逆に「実は健康に悪い」と喧伝されがちな食品が、牛乳や白砂糖、小麦粉、白米などの「白い食品」です。しかし、これらはどれも全く危険ではありませんし、精製してあることは、余分なものを含まず、雑味がなくて安全性が高く、消化・吸収されやすい食品ともいえます。
牛乳・乳製品は、良質なタンパク質とカルシウムを手軽に摂取できる食品です。乳アレルギーや乳糖不耐症でないなら、子どもに与えない理由はありません。
また、食事について知るのに、SNSの情報はおすすめしません。「○○は危険」という情報は、話題性がある分、極端で不正確な情報が拡散されやすいためです。逆におすすめする情報源は、意外かもしれませんが「母子手帳」です。省庁のサイトや、特に牛乳についてはJミルクのサイトも参考になるので読んでみてくださいね。