筑波大学教授の徳田克己先生が、ママの子育てに関する悩みに答えてくれるコーナー。
その情報は適正?考えてみよう
子育て相談をしていると、メディアで紹介される育児法を次々に試みる親によく出会います。気持ちはわかりますが、それでは子どもは混乱し、心が不安定になってしまいます。親が情報に振り回されることのないように、情報を見極める目を持つことが大事です。
たとえば「正しいが現実には無理があるもの」の代表例は「子どもを東大に入れた育児法」や「子どもをバイリンガルにする方法」など、特定の人ができたことを、さも誰もができるかのように書いているものです。「へぇ、こんな家庭もあるんだな」と思って読めばいいのですが、「うちも同じように育てよう」とがんばる親がいます。そうなると子どもに無理を強いることになり、子どもにいろいろな問題が出てきます。
「誇張されて誤解を与えるもの」の例は「テレビやスマホを見ると発達がゆがむ」など、「〇〇しないと、子どもが××になってしまう」というものです。確かにテレビやスマホを何時間も見続けると、子どもの心身に悪影響があります。しかし、映像を適度に見ることは、言葉や社会性の発達に、むしろプラスに作用します。
“極端”よりもバランスが大切
「ゲームは子どもの脳に悪影響を及ぼす」「習いごとは3歳までに始めないと遅い」などのフレーズをよく目にします。しかし、それらはウソや誇張であることがほとんどです。極端な育児をして子どもに効果があった例を、私は知りません。大事なのは、極端な情報は信じないことです。
このことは、はやりのダイエット法と同じです。「〇〇を食べればやせる」と聞いて、そればかりを食べて体調を崩したことがあるお父さんお母さんはいませんか?「〇〇だけ」の栄養バランスが偏った食事では、健康的に痩せることができないように、子育ても大切なのはバランスです。
幼児期の子どもには、字や計算の練習も必要です。でも、友達と遊ぶことは、もっと必要です。子どもは遊びを通して、社会性や考える力を身につけるからです。テレビやゲームも、いろいろな知識や体験を得るという点で大事です。子どもの生きる力は、はやりの習い事や、目新しい教材などによって得られるものではありません。
子育ての基本は、昔と大きく変わらず、子どもを圧迫しない育児です。家庭で子育ての方針をよく話し合い、ゆったりとした気持ちで、お子さんと向き合ってほしいと思います。