出産2年後に、日本陸上史上初のママさんランナーとして
北京オリンピック出場を果たし、話題となった赤羽有紀子さん。
今は引退しママライフを満喫する赤羽さんに、
元アスリートとして、ママとして、
どのように子どもと向き合っているかお話を伺いました。
赤羽有紀子 さん
元マラソンランナー。中学生から陸上競技を始め、城西大学卒業後、ホクレン女子陸上部に所属。2006年に長女を出産後も夫を専任コーチとして競技を継続し、2008年、子どもが2歳の時に5000m、10000m代表として北京オリンピック出場を果たす。2011年、2014年大阪国際女子マラソン優勝。2014年に引退し、22年間の陸上選手生活に終止符。現在は一児の母として子育てをするほか、スポーツイベントや講演活動等で活躍。
ママさんランナーの道を選んだのはなぜでしょうか?
結婚後の記録会で、6年ぶりに自己ベストを大きく更新して、その時にはじめて世界が視野に入ったんです。
ただ、夫婦ともに早く子どもが欲しかったので、子どもを産んでから挑戦することにしました。
当時の日本では、出産後も活躍する陸上選手は前例がありませんでしたが、海外ではママさんアスリートは当たり前。
私も大丈夫だろうと(笑)。おかげさまでオリンピック出場を果たし、納得いくまで競技を続けることができました。
引退した今は、選手時代にできなかった分も思いきり子育てをしたい、ママ業を満喫したい気持ちでいっぱいです。
子どもの力を伸ばすには 何が大切だと思われますか?
まずは食事。私は結婚して、専任コーチでもある夫がつくる栄養バランスの良い食事をとるようになってから、急激に記録が伸びたんですよ。
そのくらい食事は大事。子どもにも毎日の食事、日々の積み重ねを大切にすることを伝えたいです。
あとはスポーツでも何でも、楽しんでこそ。本人がやりたいことをやるのが一番です。そして少しずつ、目標を持たせてあげること。
最初は小さな目標でいいから、一つひとつクリアして、いつか子どもが自分で大きな目標を持てるように。
大事なのは、たとえ結果がダメでも、その次の目標を持てるかどうかです。どんな時も目標さえ持てたら努力できるし、前に進んでいけますから。
ママにできることは「大丈夫、ここまでできるよ」と子どもに伝えて、自信を持たせてあげることじゃないかな。
そしてクリアできた時に、ママがすごく喜んで褒めてくれたら、子どもはまた次の目標に向かってがんばれると思います。
私がオリンピックに出場し、30歳過ぎまで走り続けることができたのは、たくさんの方たちの応援や支えがあったからこそ。
ご恩を返すには結果を出すしかない、そう思ってがんばれたのです。
また、両親が私のしたいことを自由にさせてくれたのも大きかったと思います。
もし、一番身近な存在である親が、子どものやりたいことを否定したら、そこで可能性が閉ざされてしまうかもしれない。
私も母親として、子どもが好きなことをして伸び伸びと生きていけるよう、応援していきたいです。
今もたまに走ると、やっぱり気持ちいいです。みなさんも太陽の下、親子で体を動かして、何かスポーツを楽しんでもらえたらなと思います。
ママたちにエールをお願いします
選手時代も今も、私が大切にしているのは「笑顔と素直な心」です。
落ちこんでも笑顔でいれば、いつか本当の笑顔になれる。自分が素直なら、相手も心を開いてくれる。それに素直で前向きな心は、多くを吸収して成長もできます。
私は夫がコーチになった当初、コーチとしては信用できなくて反抗ばかり。
でも記録が伸びないので、試しに言うことをきいてみたら記録が一気に伸びたんです。素直は大切!と身に沁みました(笑)。
ママはカリカリすることも多いし、大人になって素直でいるって難しい。
だからこそ笑顔と素直な心を大切に、ママが子育てを楽しんでいけたら素敵だなって思います。
※この記事は2016年12月号クルールに掲載した記事に加筆修正したものです。