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子どもの「なんで」「どうして?」に親はどう応えたらいい?【子どもと向き合う・後編】

子どもの「なんで?」「どうして?」に、親は答えに困ったり、面倒でつい、ごまかしちゃったり。本当はどう応えてあげたらいいのでしょうか?

大人と子どもの哲学探究「こども哲学」を実践する、NPO法人「こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ」の副代表理事 河野哲也さんにお話を伺いました。今回はその後編をお届けします。(前編はこちら


河野 哲也さん

河野 哲也(こうの てつや)さん
慶応義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。立教大学教授。NPO法人「こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ」副代表理事。子どもから大人までの幅広い層に、哲学の楽しさと自由さを広める活動に取り組んでいます。

こども哲学では、大人はどのように関わるのでしょうか?

大人も子どもと対等な立場で考えます。重要なのは、大人が教えようとしない、答えを誘導しないこと。「どうして勉強するの?」という問いに、「将来役に立つからよ」などと返すのは、子どもに勉強をさせたい大人の下心。子どもは答えがわかっていたり、押し付けられたりすると途端に興味を失い、考えなくなります。

大人も思いこみを捨てて「そういえばどうして勉強するのかな? もしかしたら、しなくてもいいのかも!?」とゼロから考える。その問いかけが、大人もわからない、どこへ行きつくかわからない自由な「冒険」となったとき、子どもは探究心に駆り立てられ、考えることに夢中になっていくのです。

 

子どもたちは、どんな力をつけていくのでしょうか? 

一つは思考力です。子どもは「これってどういうこと?」「なぜだろう?」と問いかけ、考え続けることで、自ら考え判断し、行動できるようになります。

そしてもう一つ重要なのが、コミュニケーション力です。子どもたちは対話を通して、人の話を聴き入れることを学び、意見がちがっても対立しないで、信頼関係を築いていく力を身につけていきます。それは、立場も価値観も、年代もさまざまな人たちとつながり合って、何もないところから自分たちで共同体をつくっていく力です。既存の仕組みや組織が成り立たなくなるこれからの時代、私はこうした力こそが、子どもたちに最も必要な力だと思うのです。

今、陸前高田や気仙沼の子どもたちと、哲学対話を取り入れた地方創生プロジェクトに取り組んでいるんですよ。震災後、衰退が加速度的に進む地域にあって、子どもたちがどんな未来を創っていきたいのか、そのためにどうしていけばいいか。対話やフィールドワークを通して、専門家や地域の大人たちも巻きこみながら、新しい地域づくりを目指すものです。プロジェクトでは、子どもたちが人々と共同し、まちや社会を創っていく力を育てていけたらと思います。

 

家庭ではどのように取り入れたらいいでしょうか?

「なんで?」「どうして?」と子どもに聞かれたら、一緒に考えてあげてください。忙しくて、いちいちかまうのは大変と思うかもしれませんが、何が本当に大切なのか、優先順位をよく考えてみてほしいのです。フライパンに火をかけているとか、本当に急いでいるときは「今は忙しいから、後で考えようね」と待ってもらってもいいし、手紙でやりとりをしてもいいから、子どもの聞きたい気持ちに応えてあげてほしいなと思います。

答えは見つからなくていいのです。一緒に考えることで、子どもも、親も成長しますよ。何より、答えがわからない世界を冒険するおもしろさ、自由さを、親子で楽しむのが一番です。

 

ママたちにエールをお願いします

親はつい、子どもに「あれも、これもやらせなくては」と焦ってしまうのですが、親が思う以上に、子どもは子どもなりによく考えているし、がんばっているんですよね。子どもを信じて、ゆっくりと待ってあげましょう。真の愛は待つこと、だと思いますよ。

 

こども哲学ってどんな風にするの? 動画でご覧いただけます。

*夏休み限定*ドキュメンタリー映画「こども哲学〜アーダコーダのじかん〜」をYouTubeにて無料公開

NPO法人「こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ」では、夏休み限定で(〜8月31日)、4歳から6歳のこどもたちが1年間こども哲学に取り組んだ記録、ドキュメンタリー映画「こども哲学〜アーダコーダのじかん〜」をYouTube上で無料公開しています。

親子で、家族で、あるいは地域のおともだちと、一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。一人でも「哲学おもしろそう!」と思ってくださる方が増えますように。

「子どもの哲学 考えることをはじめた君へ」(毎日新聞出版) 河野哲也・土屋陽介・村瀬智之・神戸和佳子 
「友だちはたくさんつくるべき?」「“ふつう”ってなに?」「どうして病気になるの?」…小学生からの問いについて、哲学者たちが子どもたちと一緒に考え進めていく形で書かれた本。パパ・ママも、子どもの頃に考えていた“あの問い”を、また考えたくなるかもしれません。
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