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社会全体を「大きな家」にしよう!【ママの提言】

子育てをするママたちから社会へのメッセージをお届けするコーナー。

今回は、元自衛官で今は塾の先生をつとめる黒木久美子さんから、社会全体で子育てをしていくための提言です。

 

提言 社会全体を「大きな家」にしよう!

官舎はまるで、「大きな家」でした

自衛官時代には「駐屯地内に保育園をつくろう!」と署名を集めたことも。「通信科だったので、今でもモールス信号が打てます(笑)」

「最近飲み会行ってる?うちの子、もう大きくなっちゃって寂しくて。ちょっと赤ちゃん預からせてよ」。
そう声をかけてくれたのは、同じ官舎内に住んでいたお母さんたち。

「二次会も行っておいで、眠ってからの方がお迎えしやすいでしょ」
「煮物つくり過ぎたから、タッパーで持って行って」

そんな言葉の数々に何度助けられたかわかりません。官舎はまるで「大きな家」。

当時、夫と離婚し、娘と2人で官舎に暮らしていた私にとって、周りのお母さんたちの思いやりはとても温かくてありがたいものでした。そんな経験があるからこそ「子育てで大変な時期は、みんなお互い様」という思いを強く感じるのかもしれません。

地域全体で子どもを見守る社会に

奮闘するママの背中を見続けてきた現在中3の娘さんは、ママの帰宅時間に合わせて夕食を準備してくれるしっかり者。

私は今、母子を支援する活動を行なっています。そんな中で難しいのは「干渉されたくない」と考える家族が多いこと。

聖徳太子が「和をもって貴しとなす」と説いたように、日本の根底は「和」。子育てだって、本当は社会全体で助け合うもの。

でも、最近はちょっと間違った個人主義が広まってしまって、「個性を大切にする」=「他人と距離を置く」と理解されているように感じます。

私は駐車場にたむろしている中学生も「悪さしてると親御さんが泣くよ」などと自分の子のように声をかけるし、「兄弟が小さくて家では勉強できない」という受験生の男の子を、冬休みの間ホームステイさせたこともあります。

子どもはみんな「地球の子」。家族だけで子育てを完結させるのではなく、周りと頼りあってほしいのです。

「そうはいっても人に頼むのって気がひける」という気持ちもわかります。でも「うちだったら大丈夫!!」という大人が増えて、みんなで育児をする環境が整うことが一番ですよね。

「子どもが○○なのは親のせい」と非難するだけではなく、接している大人一人一人が支え合って子育てができたらいいですね。

「大変な時期は周りに頼って、余裕が出てきたらサポートする側に」という循環

フィリピン貧困層の子どもたちの教育支援にも取り組む黒木さん。「守りたい人がいる」と自衛隊に飛び込んだ頃の思いは今も生きています。

子どもの貧困も今、問題になっています。

貧困状態にある子どもたちに安価に食事を提供する「子ども食堂」も話題です。でも、本当は「今日お母さん遅いんだ」という子がいたら、「じゃあ、うちへご飯食べにおいで」「おかずいっぱいつくったから持って行って」という社会が理想ではないでしょうか。社会全体がそういった受け皿になれば、「子ども食堂」も必要なくなります。

子育てで大変な時期は周りに頼って、手が空いたら今度は次の「大変な家庭」を支援する。それが、世の中の循環だと思うんです。でも、今は1つの家庭だけで循環している。だから、苦しい。

今は小さな力かもしれないけど、うちならいつでも開放中。困ったら頼ってください。そして、周りを巻き込んでいって、「子育てはみんなでするもの」という社会をつくりたいですね。

 

(この記事はクルール2016年6月号「ママの提言」を加筆・修正して掲載しています)

今回の提言者は… 黒木 久美子さん
14歳の女の子のママ。新卒で防衛省に入り、通信科で暗号を専門とする自衛官に。職場結婚・出産・離婚を経て、娘が4歳の時に防衛省を退職。実家のある福島市で民間企業で働きつつ起業を目指すが、東日本大震災が起こり、栃木県へ移住して学習塾を開業。ママを支援する「個育てマム」主宰。
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